内窓で西日対策をする場合、「遮熱タイプのLow-Eガラスを選ぶべき」とよく言われます。しかし「Low-Eガラスにも種類があって、どれが何に効くのか」をしっかり理解している人は少ないのが実情です。

この記事では、なぜ西日には「遮熱タイプ」でなければならないのかを、電磁波の波長・コーティングの原理・η値(日射熱取得率)の読み方まで、専門的な視点で掘り下げます。

この記事で分かること:Low-Eコーティングが電磁波をどう制御するか/遮熱タイプと断熱タイプの根本的な違い/西日の熱が特に厄介な理由/η値の正しい読み方と製品選びへの活用

1. 西日の熱はなぜ「普通の暑さ」と違うのか

西日が厳しいのは、単純に「日光が当たるから暑い」という話ではありません。西日が特に問題になるのには、物理的な理由が2つあります。

太陽高度が低く、ガラスに直角に近い角度で当たる

正午の南日差しは太陽高度が高く、窓への入射角は浅くなります。これに対して夕方の西日は太陽高度が低く、西向きの窓にほぼ垂直に近い角度で当たります。入射角が垂直に近いほど、ガラスを通過する日射熱の量は多くなります。

蓄熱した室温に追い打ちをかける

夕方16〜18時の室内は、日中の蓄熱によってすでに温まっています。そこに西日の直射日光が加わるため、体感的な暑さが非常に強くなります。エアコンの効きが「夕方だけ悪くなる」と感じる原因はこれです。

📐 物理的な補足
ガラス面への日射透過量は入射角の余弦(cos θ)に比例します。垂直入射(θ=0°)が最大で、入射角が大きくなるほど透過量は減少します。夕方の西日は入射角が小さく(ほぼ正面)、これが日射熱取得を最大化する条件と重なります。

特に西日対策では「Low-Eガラス 遮熱タイプ」「西日対策 窓」「マンション 西日 暑い」などの検索で情報を探される方が多いです。西日対策の全体像については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶マンション高層階の西日対策はこちら

2. 窓から熱が入る3つの経路

「窓から熱が入る」と一口に言っても、実際には3つの異なる経路があります。それぞれ性質が違い、対策の手段も変わります。

1
日射熱取得(短波放射)
太陽光(近赤外線・可視光)がガラスを直接透過して室内に入る熱。西日対策で最も重要な経路。Low-Eガラスの遮熱タイプが直接制御する対象です。量が多く、時間あたりの熱負荷が大きいのが特徴。
2
熱貫流(伝導・対流)
ガラス表面が温まり、室内外の温度差によって熱が伝わる経路。Low-Eガラスの複層構造(中空層)が主に対応。断熱タイプはこちらの性能が高い。
3
二次放熱(長波放射)
ガラス自体が日射で温まり、その熱が室内に向けて放射される経路。遮熱Low-Eコーティングによる反射で一定程度抑制できます。
⚠ よくある誤解
遮光カーテンは経路①の「光」は遮りますが、すでにガラスを通過した熱(②③)はカーテン生地が吸収・放熱してしまいます。カーテン自体が暖房器具のように働くのはこのためです。

3. Low-Eコーティングとは何か

Low-Eとは「Low Emissivity(低放射率)」の略です。ガラス表面に銀(Ag)を主成分とする金属酸化物の薄膜を数層スパッタリング(真空蒸着)したもので、厚さはナノメートル(nm)オーダーです。

コーティングが制御するもの:電磁波の波長

太陽から届くエネルギーは波長によって性質が異なります。Low-Eコーティングは波長ごとに透過・反射・吸収の比率を変えることで、「通す光」と「弾く熱」を分けます。

UV
可視光
近赤外線(熱線)
〜380nm 380〜780nm 780〜2500nm
紫外線(UV)
日射エネルギー全体の約5% 日焼け・色褪せの原因。Low-Eガラスは種類によらずほぼカット。
可視光
日射エネルギー全体の約45% 明るさとして感じる光。遮熱タイプは可視光はある程度透過させる設計。
近赤外線(熱線)
日射エネルギー全体の約50% 目に見えないが熱として感じる。西日対策の本命ターゲット。
🔬 コーティングの反射原理
銀(Ag)薄膜は近赤外線帯域(780〜2500nm)の電磁波に対して高い反射率を持ちます。この帯域は日射エネルギーの約50%を占めており、ここを選択的に反射することで「明るさ(可視光)は通しながら熱線は弾く」という制御が可能になります。コーティングは1層ではなく、Ag層をTiO₂やSiO₂などの誘電体膜でサンドイッチした多層構造で、反射率と可視光透過率のバランスを調整しています。

4. 遮熱タイプと断熱タイプ、何が違うのか

Low-Eガラスには「遮熱タイプ」と「断熱タイプ」の2種類があります。どちらも同じLow-Eコーティングを使いますが、コーティングをガラスのどの面に施すかで性質が根本的に変わります。

遮熱タイプのコーティング位置(内窓の場合)
↓ 西日(近赤外線)
外側から
外側ガラス(既存窓のガラス)
── 中空層(アルゴンガス等)──
Low-Eコーティング面(室外側に向けて配置) ← 熱線をここで反射
内側ガラス
室内
比較項目 遮熱タイプ 断熱タイプ
コーティング位置 室外側のガラス面 室内側のガラス面
近赤外線(熱線) 反射・カット △ 通過する
日射熱取得率(η値) 低い(例:0.30〜0.40) 高め(例:0.50〜0.60)
熱貫流率(U値) 同等〜やや劣る 優れる(冬の断熱性高い)
西日・夏の遮熱 西日に最適 ◎ 不向き
冬の暖房効率 △(日射取得も制限) ◎(太陽熱も室内に取込む)
向いている方角 西・東・南(夏の遮熱重視) 北(日射取得より断熱優先)
西向き窓に断熱タイプを選ぶのは逆効果になる場合があります。
断熱タイプはコーティングが室内側にあるため、外から入ってきた近赤外線をそのまま通過させます。「Low-Eガラスなら何でも西日に効く」は誤りです。

実際にどのような対策を選ぶべきかは、住まいの条件によって異なります。
→ 西日対策の具体的な方法一覧はこちら

5. η値(日射熱取得率)の読み方

ガラスの遮熱性能を表す指標がη値(イータ値)=日射熱取得率です。製品カタログや補助金申請書類に必ず記載されています。

📊 η値の定義
η値=室内に入る日射熱 ÷ 窓に当たった日射熱の総量
値の範囲は0〜1(0に近いほど日射熱をカット、1に近いほど熱が入りやすい)。
単板ガラス(普通の窓)のη値はおよそ0.88。

代表的なガラスのη値比較

単板ガラス(普通の窓)
η = 0.88
0(熱を全カット)1(熱を全透過)
複層ガラス(普通のペアガラス)
η ≈ 0.70〜0.75
01
断熱Low-E複層ガラス
η ≈ 0.50〜0.60
01
遮熱Low-E複層ガラス
η ≈ 0.30〜0.40
01

上の比較から、遮熱Low-E複層ガラスは単板ガラスと比べて日射熱の侵入を約60%カットできることが分かります。これが「エアコンが効きやすくなった」「夕方の暑さが別物になった」という実感につながります。

η値は製品・ガラス構成によって異なります。補助金申請(先進的窓リノベ等)では性能区分ごとにη値の基準が設けられており、内窓の場合はガラス単体ではなく窓全体としての性能値が用いられます。製品選定の際は施工業者にご確認ください。

6. 内窓として使う場合の注意点

マンション高層階など外付けシェードが使えない場合、遮熱Low-Eガラスを「内窓(二重窓)」として設置するのが最も現実的な解決策です。ただし、内窓として使う際にいくつか注意すべき点があります。

1 コーティング面の向きを確認する
内窓の場合、遮熱タイプのコーティングは「外側(既存窓に向く面)」に来るよう設置します。製品によってはコーティング面が内側になるものがあり、それでは遮熱効果が発揮されません。施工業者に必ず確認してください。
2 既存の外窓との組み合わせで性能が決まる
内窓単体のη値だけでなく、既存の外窓と内窓の組み合わせ全体で熱の入り方が変わります。既存の外窓が単板ガラスの場合、日射熱は外窓を通過した後に内窓で遮られます。外窓で吸収・再放熱された熱も一定量は室内側に伝わるため、外窓交換と比べると効果には限界がある点は理解しておく必要があります。
3 遮熱と採光のバランス
遮熱性能が高いほどη値は低くなりますが、可視光透過率も下がる傾向があります。眺望や採光を重視する場合は、η値と可視光透過率のバランスを見て製品を選ぶことが重要です。


マンション高層階の西日対策については、こちらの記事で全体像を解説しています。
▶外付けが難しい場合の現実的な対策を見る

まとめ

この記事のポイント

  • 西日は入射角の関係でガラスへの熱負荷が最大になる条件に近い
  • 窓からの熱侵入は「日射熱取得・熱貫流・二次放熱」の3経路がある
  • Low-Eコーティングは近赤外線(熱線)を選択的に反射する金属薄膜
  • 遮熱タイプはコーティングを室外側に配置し、熱線を入口で弾く
  • 断熱タイプは西向き窓には不向き。「Low-Eなら何でも良い」は誤り
  • η値(日射熱取得率)が低いほど遮熱性能が高い。単板ガラス比で約60%カットが可能
  • 内窓施工時はコーティング面の向きと既存窓との組み合わせ性能を確認

実務的な結論|西日対策で失敗しないために

西向きの窓においては、遮熱タイプのLow-Eガラスを選ぶことが基本となります。

ただし、最適な仕様は、

  • 窓のサイズ
  • 既存サッシの仕様
  • マンションの条件
  • 冬場の日射の取り込み方

などによって変わります。

そのため、「とりあえず遮熱タイプを選べばOK」という単純な話ではなく、
現地条件を踏まえたうえで最適な構成を決めることが重要です。

LINEで無料相談・お見積り ▶
お問い合わせフォームはこちら

営業時間:8:30〜18:30 ※土日祝もご対応いたします